深夜の泥棒 <後編>

 

妹の話によると、Mさんの息子さんが

うちの家の前を通過するとき

足音を立てずスケートのように滑るように移動し、

真冬だというのに白装束姿で歩いていたという。

 

妹も植木の茂みの中から目だけを出して

息子さんが帰宅するのを見送ったそうだが

玄関ドアの開閉の音も立てず

いつの間にか姿が消えていたことが印象的だったそう。

 

そしてその息子さんを見たという次の日、

Mさんの息子さんは癌で亡くなった。

 

妹がMさんの息子さんを目撃したときは

すでに危篤状態で入院中だったから

外出は不可能だった。

 

お別れの挨拶に来たのかも知れない息子さんに

今度は天国からMさんの自宅に

泥棒が入らないよう見守っていてほしいとお祈りした。

 

そのMさんのお母さんも高齢のため

最近お亡くなりになった。

 

天国で親子の対面を果たしていると思う。

 

あれからもう20年経つが未だに泥棒騒ぎは起きていない。

 

また、市も犯罪抑止と事件の早期発見と子供の見守りを目的として

市内に1000台の防犯カメラを2016年から設置。

 

その防犯効果もあって現在も平和は保たれている。

 

犯罪抑止に一役買った巨人のメガホンは、その後、

妹が巨人ファンからヤクルトファンに鞍替えしたので

現在実家の物置でホコリをかぶって眠っている。

 

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